「………大丈夫?」
心配になって問うと、架くんははっと目が覚めたように頭(かぶり)を振った。
「だ、大丈夫っ。だい――………」
「全然大丈夫じゃないよねっ! ちょっと保健室行くよ!」
言いかけて落ちた架くんを、私は強制連行した。
保健室のベッドに放り込んで、留守にしている先生への言伝を書くことにした。架くんを少し寝かせてもらわないと。
先生は百合緋ちゃんの親戚だそうで、私は転校して初日に身バレしている。
「……ごめん」
ベッドスペースとを区切るカーテンはまだ開けられている。
架くんは完全に私に肯いたわけではないと言うように、腰かけた格好のままだ。
「謝らなくていいよ。悪いことしてるんじゃないし。……斎陵への転校を願ったのは、私だし」
「でも、請けたのは俺だよ。自分の意思でここに来た」
「………」
架くんが斎陵学園へ転校して、二週間になる。まだ慣れないようだ。
……と言うか、転校前と架くんの状況はあまり変わっていない。
勝手に王子様然と見られている。
それをうまくやり過ごしながら、桜城の人間としても動かなければならない。疲労もたまるだろう。
――桜城の人間であることは、旧(ふる)い血筋の多いこの学園では特筆すべきことの一つにあげられるらしい。