……自分でどうにかするしかないよな。
今の自分の位置を、真紅の伴侶と認められるまでに。
「兄貴。もう『桜城』じゃないからって、うちに来ないわけじゃないよな?」
「ん? 俺が帰る用もないだろ」
「用もないのに帰るのが実家だろ。美愛さんも父さんも、母さんも待ってるからたまには帰って来い」
「………」
「じゃないと、俺が学校帰りとかに真紅ちゃんだけ連れてくる」
「俺が連れて行くからやめろ」
兄、敗北。……所詮兄なんて、弟には弱いもんだ。
「わかった、ちゃんと帰る。……お前、本当に斎陵に行くのか?」
学校帰り、というのなら、同じ学校にいるということだろうか。
真紅は架に斎陵学園に来るように要請したし、架はそれに肯いた。
「行くよ。俺が従うのは真紅ちゃんだって、もう決めたから」
「……友達からどういう飛躍してんだ」
従うって言っちゃったよ、この弟は。
「けど……いいのか? 斎陵って言ったら、黒藤や月御門もいるんだぞ?」
「―――」
ぴた、と架の足が停まった。
なんとなく俺も立ち止るが、架は硬直してしまったように瞬きもしない。
……おい?
「架?」
「…………………そうだった…………若君や白桜さんもいるんだ……真紅ちゃんは白桜さんと同じクラスって……言ってたよね…………?」
「らしいな。黒藤は学年、一つ上だろ?」
「………行きたくなくなってきた……」
架が項垂れた。うーん、可哀想だ。
「あの二匹にはあんま近づきたくねえよな」
「主家の若君を虫扱いしないでよ」
真面目だった。項垂れつつも訂正を求めて来た弟の肩を叩いてやる。
「お前が言っちまったんだ。腹括れ」
「トドメ刺さないでよ。放蕩者」
……『兄貴』から格が下がった気がするのはなんでだ。