「なら弥生さんか?」
「なんで母さんまで巻き込む!」
「美愛さんはなんも知らないだろうから」
「ハウス! 兄貴ハウス! 俺が話すから思いとどまってくれ!」
普段罵倒されてばかりの弟に懇願されたので、破片くらいは弟可愛いもあるから思いとどまってやることにした。
「はー……なんで兄貴が関わると、こう疲れるんだろ」
「諦めろ」
「もう諦めてるよ。家を継ぐって決めた時点で」
そりゃそうだ。
架は恨めしさ全開で睨んで来た。
「……若君は当主に向かないよ。さっき話した通り、には絶対ならない。でも、若君は縛りが少ない方がいい」
「……自分で振った話を全部覆すのか」
「話した通りにならないっていうのは、若君、責任感は強いから、『御門と対等の小路』を維持されるおつもりはあるだろう。そしてそれを叶えるだけの力量もある。白桜さん大すきはどうしようもないけど、そこに流派に関わる問題を持ち込まれる人でもない。問題は、御門を超越してしまう小路を築かれる可能性があるから、だよ」
「黒藤が後を継げば、小路が御門を上回ると?」
「若君はまだ、総てお力を解放されてはいない。その状態で当代最強だの並ぶ者なしだの言われている。どちらかと言うと自流派への自尊心は、一度滅亡しかけた小路流の方が強い。御門が小路を眼中に入れていないってわけじゃないけど、御門は自分たちの地位を高みに置くことにこだわっていない。どれほど落ちぶれても、プライドは保つような性質がある。けど、小路は御門と対等、あるいは上回っていることにこだわる。――こだわっているから、若君がいつまでも正統後継者の地位を追われないんだ」
「…………」
それは俺にも、得心のいく説明だった。