「大体さ、若君が跡継いだらどうなると思う? あの、白桜さんのこと以外眼中なしの力だけ特大で、ストッパーは白桜さんだけ。しかも白桜さんは御門流の当主。小路流が御門流の下敷きになると思わない?」
「………」
言われて、考えてみた。この際性別は抜きにしてみよう。
二大大家のもう一つの当主を溺愛する当主が現れる。…………………。
「……あまりよろしくないな」
「だろ? そういう要素もあるっちゃ、ある」
「それはそうだが――真紅が黒藤を上回ると?」
「そこまではわからないよ。でも、始祖の転生のほとんどが当主になってきたのも事実だ。……兄貴はなんで『始祖の転生』がそれほど特別に扱われるのか、知ってる? 俺知らないんだけど」
「知らないな。『始祖の転生』というもの自体、最近まで知らなかったくらいだ」
「……そこは知っておこうよ……」
絶望の声をあげる架は、相変わらず生家至上主義だった。
「真紅が当主に向いていると、本気で思ってるか?」
「……総てを考案した上で、真紅ちゃんが当主になられるのがいい、とは思っている」
「答えになってねーぞ」
「答える気はないからね」
「……おい」
「凄んでも何も言わないよ。兄貴は自分から知ることを放棄したんだから、知りたいんなら自分で知ってよ」
「……そりゃそうだな。じゃあ手始めに誠さんあたり脅してくる」
「どういう親不孝者だよっ。父さんが可哀想過ぎるだろっ」