「わざわざ迎えか?」

「護衛の間違い」

影小路の家から少し離れた曲がり角で、足を停めた。そこにいたのは弟だ。

架が後から来ていたことは承知していたので、特に驚くことはない。真紅は気づいていなかったようだが……そういうところ、まだまだ未熟ということか。

「いいのか? 真紅、お前の言ったことに意味、ちゃんと理解してないぞ」

「……兄貴はわかってるって言いたい?」

「誠さんが仕えているのはあくまで影小路一族。それを、次代のお前が『真紅に仕える』って言ったら――とどのつまり、真紅を影小路の当主に推すと言ったようなもんだろ」

見遣ると、架は不敵な笑みを見せた。

「さすが。そういうことだよ」

「そんなことしてどうする。黒藤の出自があれとはいえ、正統後継者としてあるんだぞ?」

架が歩き出したので、俺は渋い顔で並んだ。

「別に、若君どうのって考えがもとではないよ。いや――若君が望む道の為には、真紅ちゃんが後継になった方がいいとは思うけど」

「あいつが望む? ……って、まさか月御門を嫁にするとか言ってるあれか? そりゃ、同性愛だのマイノリティに理解があるのはいいと思うけど……」

医学部生で心療医見習いという職業(?)柄、そういった例には面してきたこともある。世間の目はまだまだ冷たいとも実感している。

「そういう話じゃないんだけど……」

白桜さんがこれ以上バラすわけないか。平坦な表情で、架は意味ありげにそんなことを言った。月御門がなんだって?