「俺も同じ気持ちです。真紅以外無理なんです。勘当された身ではありますが、誠さんと美愛さんが親であることは変わりません。将来、真紅との結婚をゆるしてください」
黎も同じように頭を下げる。架くんが何か言いたげに腰を浮かせたけど、誠さんの声が先に発された。
「……同じことを、考えるんだね」
顔をあげて。と、誠さんに促されて、頭をあげた。
「一緒にいるためなら家も捨てられる、か……。私には無理だったことだが、二人なら真っ直ぐその道を選ぶんだろうなあ……」
「誠さんは反対に美愛さんを連れて来たでしょう」
「まあ、その通りなんだが」
黎に言われて、苦笑を噛み殺す誠さん。
「……反対、ですか?」
黎が問うと、誠さんは「うん」と顎を引いた。
「正直、展開が突飛過ぎて総て話についていけない。だが、反対する気はないよ。黎が今生きているのも、真紅さんが生きているのも、お互いのおかげなのだろう? 命には責任が発生する。反対はしない。それに、反対されたからと大事な子どもにいなくなられるのも……きつい。……代わりに、黎、お前は桜城を出て小埜の人間となった身だ。影小路本家や十二家へ承諾諸々に関して、我々桜城家は一切関わらない。――そのくらいの線引きでいいのか?」
誠さんの問いかけに、黎は一瞬言葉に詰まった。
黎と私のことに対して、桜城家はどういう態度を貫くのか――誠さんはそれを示して見せた。
「――はい」
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
黎が肯き私が謝ると、誠さんは「なに」と軽く首を横に振った。
「子どもはいつまでたっても子どもだ。可愛いことに変わりはない。その子が選んだ相手も、大事だよ」
瞼をおろして優しく語る誠さん。そして隣の美愛さんの、穏やかな表情。
そして、更にその隣の弥生さんは唇を引き結んでいた――と、思ったら。
「――誠、美愛。わたしも決めたわ」
「やよい?」
「どうした」
誠さんと美愛さんが不思議そうに弥生さんを見遣ると、弥生さんは正座したまま手をついて方向を変え、架くんの方を見た。
「? 母さん?」