「当時は、そうするよりほかに真紅と一緒にいられない状況でした。俺から鬼性が消え、今は陰陽師であり退鬼師の血を持つ真紅と一緒にいることが出来ます。……誠さんと美愛さんには感謝しています。お二人がここにいなかったら、俺が鬼性を継いでいなければ、真紅と出逢うことは出来ませんでした」
真っ直ぐ向いた言葉に、誠さんと美愛さんは驚きを隠さず目をみはった。
「……まさかお前からそんな言葉を聞こうとはな……。黎、真紅嬢。小埜殿から概要は聞いているが、どうして黎から鬼性がなくなったか、詳しい説明はされていない。本人たちからいずれ、と言われたままにごされている……。聞かせてもらえるか?」
核心を衝かれて、黎と顔を見合わせた。黎が、軽く肯く。
「最初に逢ったとき、真紅は出血多量で瀕死の状態でした。俺は、その真紅の血を吸いました」
「「「………」」」
「そのとき、黎さんは反対に、私に自分の血を送ってくれたんです。その頃は、私はまだ影小路のことも知らないし、桜木が退鬼師であるということも知りませんでした。私の中に鬼人である黎さんの血が流れて、退鬼師としての血が、黎さんの血にあった鬼性を祓いました。黎さんの中に流れていた私の血にも鳴動して、黎さんの中から鬼性を祓ってしまったんです」
「「「………」」」
「黒藤に言わせれば、俺は真紅の血を吸ってほどなくして人間になっていたということです。お互い、すぐには気づきませんでしたが……真紅が、黒藤や月御門の主に逢って、影小路のことや自分のことを知って、俺の中に退鬼師の血が流れたことで、俺への影響を心配してくれていました。……その頃は、傍にいられないと思っていました」
「私の血が、黎さんを害してしまう可能性がありましたから……。ですが、私に始祖の転生の力が戻っても、黎さんは生きてくれていました。そして、黒藤さんと白桜さんがことの経緯を突き止めてくれたんです。黎さんの鬼性を滅しただけで、命に別状はない、と。――お願いです。私は黎さんと一緒にいたいです。どうか、黎さんと付き合っていくこと、その先に結婚すること、お認めください」
半歩分身を引いて、頭を下げた。
白ちゃんに逢いに行った夜、黎に言った。私が黎をもらいに行くって、言うって。
その言葉、今は口にすることが出来る……。