誠さんに誘(いざな)われたのは客間だった。

黎の隣に座って、机を挟んだ正面に誠さんと美愛さん、美愛さんの隣に弥生さん、そして少し離れて架くんがいる。

「黎から総て聞いているそうだね?」

藪から棒に、誠さんはそう問うてきた。

「はい」

答えながら、そっと架くんの様子を窺う。

総て、とは、架くんの父親のこともさしているのだろう。案の定、そのことを知らないという架くんは、特に動揺した態度も示さなかった。

「その上で、黎と交際されると?」

「黎さんの生い立ちは、今の私には関係ありません。それより……黎さんは、私の命を助けてくれた人なんです」

「命?」

「始祖の転生として覚醒する前に、私の存在に気づいた妖異に襲われたんです。それを助けてくれたのが、黎さんでした。そして、黎さんが吸血鬼でなかったら、私はそのまま死んでいました。……もしも影小路本家の方々に反対されたら、私は影小路を出ます。そして、黎さんと一緒に居る方を選びます」

私が決めていたことだ。誠さんは、考え込むように重心を後ろに下げた。

「……真紅嬢が、黎が家を出ると言った理由だったか……」

机の下に隠れている、私が膝の上で重ねた両手を、黎の左手が覆った。反射的に見上げると、黎は真っ直ぐ両親の方を見ていた。