『影小路が始祖の転生』と、その存在を括られるにはそれなりの理由がある。
私はそれを、記憶の中で確認している。始祖と呼ばれる者たちは、禁忌を犯した者たちだ。陰陽師として、人間として……。
「マコ、何が問題なの? 私はそういった話はわからないから、話してることが全然わからないわ」
「あ、はい――
「それがな、美愛――
美愛さんに『マコ』と呼ばれ、私と誠さん、両方が美愛さんの方を見た。ぷっと吹いたのは黎だった。
「えっ? なんで笑うの?」
私が当惑顔をすれば、黎は少しだけ肩を揺らした。
「ごめん真紅。言ってなかったけど、美愛さんは誠さんのこと、『マコ』って呼んでるんだ。そっか、同じ呼び方になっちゃうんだな」
「マコはマコよ。まこちゃんのことは『まこちゃん』って呼ぶわ。ええと、や……ややこしくてごめんなさい、だったかしら?」
美愛さんは日本語が完全ではないようで、首を傾げながらそう言った。
美愛さんが呼びかけたのは誠さんだと理解した。
「黎――真紅さん。少し中で話そう。このような所で話していい話ではない気がするよ」