私が影小路の人間であること、陰陽師見習いであること……ばれていないようだ。
黎と同じ銀色の瞳で言われて、一瞬ドキッとしてしまった。この人がいたから、黎はここに……。
「黎が彼女連れて来たって!?」
勢いよく駆けて来たのは、黎とよく似た和服の男性だった。――桜城が当主、桜城誠さんだろう。
誠さんは息を弾ませて、黎に向かって破顔した。
「黎、よく連れて来たなあ。えらいえらい」
「いや、お願いですから三人とも落ち着いてください」
えらいえらい、と誠さんが頭を撫でている架くんが言った。
実は誠さんが来る前に架くんも来ていたのだけど、弥生さんに連行された状況を見てとって意気消沈していた。
そしてなるほど。みなさんノリがいい。黎と架くんが疲れるのも少し納得する親御さんたちだ。
「誠さん、美愛さん。彼女とは結婚前提で付き合っています。紹介が遅れたことは申し訳ありませんが――」
「そうか。それはいいな。はじめまして。黎の父の桜城誠だ。それと――」
「誠さん、真紅にはうちのこと、全部話してあります」
「……全部?」
「はい」
微笑んだまま問うた誠さんに、黎は軽く肯いた。誠さんはまた、「そうか」と言って続けた。
「妻の美愛と、幼馴染の弥生だ」
誠さんは私に、美愛さんと弥生さんをそういう風に紹介してくださった。
「よろしくね」
「急に連れて来ちゃってごめんね? ちょっと黎のことではもめてたから、色々訊きたくて」