「黎――もしかしてその子が?」
女性は、今度は私をじっと見て来た。だ、誰だろう……? 知らない人だ。けれど、どこかで見たような気がする……。
「……なんでこんなところにいるんですか」
黎が苦い顔で答えると、女性はくわっと目を見開いた。
「なんで連れて来ないのっ。二人がどれほど心配してたと思うのっ?」
いきなり怒られた。
面喰っている間に、女性は私の前に立った。
厳しい顔で。
「あなた、名前は?」
「ま、真紅、です」
「まこちゃん? 今すぐ来てもらうわっ」
え? 私が口を開く前に、女性は私の腕を摑んで走り出した。
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「ほわー……」
女性は途中でタクシーを掴まえて、私と黎を押し込んだ。
そのまま連れて来られたのは大きな日本家屋だった。その前に立った私は思わず感嘆の声をもらした。
「影小路本家の方が大きいんじゃないか?」
隣に立った黎が言った。
「そうかもしれないけど、向こうはすごく旧(ふる)かったから……」
また、大きな門から見える庭木と奥の方に見える家屋を見た。これが黎のご実家……。
女性に連れて来られたのは、黎の生家である桜城家だった。
「黎、あの人って……」
「弥生さんだ。架の母親」
やっぱり、と内心肯いた。架くんの面差しと似ているんだ。