「真紅ちゃん。今度の日曜日は空けておいてね」
斎陵学園からの帰りに海雨のところへ寄って来ると、ママにそう言われて面喰った。
「え、でも日曜日はいつも紅緒様が……」
部活はしていない私は丸一日休みなので、紅緒様に教えてもらっている。代わりに、土曜日は必ず海雨のところへ行けるようにしてもらってもいる。
「紅緒には言ってあるわ。一緒に住むようになってから、三人でお出かけとかしたことないでしょう? 三人でお出かけしましょうって言ったら、紅緒すぐに肯いてくれたわ」
「………」
だろうね。紅緒様のママ大すきはシスコンだからね。
口には出さないけど、心の中で大きく肯いていた。
「紅緒とは初めてのお出かけだから、ちょっとおしゃれして行きましょうね」
ママは、やっぱり柔らかい笑みでにっこりと言った。
三人で暮らすようになって、毎朝黎が来ることも日常になった。病院へ行けば、必ずではないけど逢える日もある。
陰陽師として生きていくのは厳しそうだ。
一緒に暮らし始めて二週間。すでに三十回くらい心が折れそうになっている。
けれど、これは私が選んだ道だ。自分で選んだものを諦めるのは、すごく嫌だった。
だから今は、誰より傍にいてくれた親友のために、がんばるだけだ。
白ちゃんが言っていた。
海雨にある妖異の残滓(ざんし)は、恐らく私が傍にいるだけでも、瞬間的ではあるが薄らぐだろうと。
海雨が少しでも楽でいるために、ぎりぎり時間を作って病院へ訪れていた。
日曜日、私はママに相談して、早いうちに海雨のところへ行ってからママたちと合流することになった。
少しでも海雨に逢いたいのもあったし、白ちゃんの言っていたことが本当だったとしたら――だ。
「えっと……ここでいんだよね?」