「………」

黙って黒藤を見つめる。

いつも飄々(ひょうひょう)としていて、軽い言動の多い幼馴染。だがそれは抱えているものの裏返しで、背負っているものは俺よりも重い。

「なあ、白」

「うん?」

「あいつさ……」

「誰だ?」

珍しくいいよどんだ黒。続きを待って見上げていると、ふっと顔を背けた。

「いや、今は……いい」

「? そうか?」

なんだというのだ。今は、ということは未来(さき)に何かあるのか?

「明日、学校でな」

「サボるなよ?」

俺の皮肉に、黒は薄く笑って別邸をあとにした。

俺も、今日の仕事を片付けるために私室へ戻った。