「真紅」

「うん?」

黎が隣を歩くうちへの帰り道、名前を呼ばれて黎を見上げた。

「……よかったな」

「……うん」

海雨は、澪さんの告白を受け容れはしなかった。けれど、拒絶もしなかった。海雨の時間が暮無様を置いて、少しずつ動き始めている気がする。

私たち、一度ずつ終わりがある始祖の転生と違って、始祖当主には終わりがなかった。

この先、暮無様の命がどうなるかはまだわからない。

このまま転生の檻にあるか、その檻を外れて生まれ変わることもなくなるか――。

私たちが、まだ転生を繰り返しているように。

私から黎の手を握ると、驚いたように見て来た。

「……この先、私たちや暮無様の命がどうなるかはわからない」

「……ああ」

「でも、私はこのまま生きていく。影小路の名前で、……」

きゅっと、手を握る力を強めた。

「……出来たら、黎の……隣、で」

「当然」

ふっと、一瞬の間に唇を奪われた。

「れ、黎! 人前!」

「なんだ? ずっと隣でいいんなら、これくらい通常でするけど?」

「~~~」

夕闇の道とはいえ、人通りや車通りがないわけではない。恥ずかしさから真赤になる私を、黎は楽しそうに見ている。