「紅緒様の姪――黒の従妹が、始祖の転生として覚醒した。今は紅緒様、母の紅亜様とともに暮らしているが、恐らく小路流の後継者争いに関わってくるだろう。そうなれば、御門としてもなんらか動く必要が出てくる。お前たちにも当主直属としてやってもらうことが出来るだろう。――何があっても、

「動揺せず」

「心に余裕を持ち」

「真実(まこと)を見つめること、止(や)みません」

俺の言にかぶせてきた三人に一瞬虚を衝かれたあと、唇の端で笑った。俺が三人によく言っていた言葉だ。

「俺のこともわかられているな。これ以上お前たちに言うことはない。――お前たちそれぞれに妹背(いもせ)が出来てここを離れるまでは、俺がお前たちの主だ。俺は最後までお前たちを誇りに思う」

妹背――背の君。生涯の伴侶を見つけるまでは、三人は俺のためにここにいる。だから、俺は三人を信頼することで返事をする。


+++


「ここでいいよ。白もまだ仕事、あんだろ?」

月御門別邸の門まで黒を送りに出た俺に、黒は微笑んだ。

「ああ。……お前も、夜警もほどほどにしろよ。縁(ゆかり)が心配する」

「まーな。縁はほんと、口うるさい姉って感じになってきたよ」

「いいじゃないか。俺もお前も、きょうだいはいないんだし」

黒の世話に手を焼いている縁を思い出して、思わず笑ってしまった。

縁は戦闘には向かない。

俺の配下二基がともに戦闘向きであるのに対して、黒藤の配下三基で、戦いの場に出られるのは無月だけだ。

その辺りは、主の差なのだろう。

「黒。真紅はお前を、越えられないよ」

「ん? どした?」

「真紅が小路の跡目争いに関わってくると言う話だ。過去の転生がことごとく当主になってきたとはいえ、真紅の力量はお前には届かない」

「……そうであっても、俺が当主になるのは問題だらけだ」

「月御門(うち)も影小路(お前)も、純粋な人間の血だけでないことは周知されていることだ。……お前がそこまで思い悩むことはないと思うんだが」

「父上が人間(ひと)でないことは、どうでいいんだ。……俺の命が父上を抹殺したことが、問題なんだ」