「いいよ。真紅に独りで泣かれるよりは全然いい」
空いている手で、私の髪をくしゃりと撫でる。
思わず目をつぶって、次に見た黎はいつもの黎だった。
私に優しい、大事にしてくれる恋人。
急に、申し訳なさが募って来た。
「……昨日は、ごめん」
「俺こそ悪かった。真紅が大変なときに、余計な負担かけちまった」
そう言って微笑んでくれる存在のありがたさに、泣きたくなる。やっぱり――
「私、黎といると元気になれるみたい」
自然と黎に向かって微笑むと、まなじりに残った最後の涙が流れ落ちた。
「―――」
「昨日、黎に言っちゃってからね、ママにも架くんにも、元気ないって言われてた。でも、黎が笑ってくれたら元気、出て来た」
「……見つけた」
「? なにを?」
「俺に出来ること」
「――わっ⁉」
急に、身体が宙に浮いた。
黎が私の脇に手を差しこんで、持ちあげた。
「れ、黎? 重いよ?」
「軽いよ。見つけたんだ、やっと。俺が真紅に出来ること」
「え?」
「真紅を元気に出来る」
「……あ」
「紅亜様にも架にも出来ないことなら、俺に出来ることって誇ってもいいかな? 俺が真紅を元気に出来るって」
元気に出来る。――黎といると、元気になれる。
昨日と今日の、自分の違いよう。
「……うん、黎にしか出来ないかも」
そっと腕を廻して、黎の頭を包み込むように抱きしめた。
「黎が居てくれると、私の隣で笑っていてくれると、私、元気でいられるよ。――何があっても」