「無月」

真紅と黎を残して廊下に出た俺の傍らに、妖異の気配が生じた。

「さっき真紅が話したこと、言われた通り誰にも言うな。涙雨や縁(ゆかり)にもだ」

《……承知した》

「じゃー先に戻ってるか。真紅の回復は、黎に任せときゃ大丈夫だろ」

黎なら、真紅を癒やせる。黎だけが、今の真紅に言葉が届く。

《いいのか? 真紅が話したことが総て真実なら、影小路の根幹を揺るがしかねない》

提言する無月に、俺は、はっと捨てるような笑いを見せた。

その瞳に宿る光は銀。

「お前が忘れたワケじゃねえだろ? ――俺の目的は、影小路の瓦解(がかい)だって」