「白は昔っから女の子みてーだなって言われてるからなー」

それはフォローなのか。黒藤ののんびり言葉に、自分の額を押さえる。

「でも、お前らの『白桜様』は取らねーから、安心してろよ。そこの盗み聞きたちもな?」

「「………」」

「……ばれていましたか」

言ったのは結蓮で、黒藤が流し見た先は結蓮とその背後の襖だった。

降参とばかりに結蓮が平伏すると、襖がそっと開いた。

その向こうから、とび色の髪の青年と、高い位置で髪を結った少女が現れた。

「申し訳ありません、白桜様。黒藤様が不届きな真似をされませんか不安で致し方なく」

「ごめんなさい白桜様! 華樹(かき)を止められませんでしたっ!」

先に言ったのが華樹で、鋭く黒藤を睨む華樹を止めようとしているのが牡丹だ。黒藤と二人は同い年になる。

「そう睨むなよ、華樹。つーか呼び捨てでいいって」

「かようなことは。立場は弁えねばなりません。――御身(おんみ)も」

毒を向けるような視線と毒舌の華樹に、またため息を吐く。

「うーん……こうしてみると、架って華樹に似てんなあ」

毒を浴びせられている張本人、ノーダメージ。隣の俺、疲れ果てる。

「かける? どこの者ですか。また白桜様に厄介ごとを押し付けましたか?」

華樹は元々目つきがわる――眼光が鋭いので、普通にしていても睨んでいるように見えるらしい。

それが今、敵意を持って黒藤に接しているもんだから……俺は色んなところで板挟みになる。

「華樹。退(ひ)け。仕事の話だ」

「………失礼いたしました」

声も険しく言うと、いきり立っていた華樹は静かに畳に膝をついた。そして正座したまま黒藤を睨む。

……しょうがないなあ。

「お前たちにも話しておく。小路流の今後も関わってくる話だ」

「と、言いますと?」

「紅緒様が目覚められたことは知っているな?」

「はい」

「ええ」

俺の言葉に、華樹と牡丹が答え結蓮も肯く。