「真紅ちゃん、今日は黎くん遅いわね?」

学校へ行く支度をしていると、ママに言われた言葉に唇を噛んだ。のもつかの間、何でもない風を装って振り返った。

「言い忘れてたけど、黎、今日から実習でこっち来れないんだって。一週間くらい、来れそうにないって言ってた」

「あら、そうなの? だから真紅ちゃん元気なかったのね」

「……そう見えてた?」

「うん。いつもより、全然笑ってないわよ? でも、また逢いに来てくれるんでしょ? それまで少しがんばらなくちゃね」

「………、うん」

次に黎に逢ったら、なんと言おう。なんと言えばいいだろう。

家を出て、道すがら思考に落ちる。

霊獣であるために人には見えない紅は私の隣を歩いていて、黒い小鳥の姿は普通の人にも見えるるうちゃんは隠形して私の肩に乗っている。

黎は小埜姓であっても、陰陽師一族・小埜家の人間ではない。

家のことを――陰陽師や祓魔師(ふつまし)のことを完全に理解してくれというのは無理かもしれない。

たぶん私は、仕事の理解を黎に求めてはいない。だから、どこまで話していいかの境界線もわからない。

私が黎に望んでいる位置と、黎が私に望んでいる位置にはずれがある。

自分をどう考えてほしいか。どうとらえてほしいか。

……上手く言葉に出来なくて困っている。