部屋に残された俺のもとへ、首を傾げながら祖父がやってきた。
「澪、真紅嬢はどうされたんだ?」
「……じいちゃん、ちょっと待ってて」
祖父の質問には答えず、反対側の廊下へ繋がる襖を開けた。
「……聞いちゃったか」
黎が死亡していた。もとい、ダメージを喰らって膝をついて頭を抱えていた。
お嬢さんの声を聞いたらしい黎がここに来て、襖を開ける寸前でさっきの言葉をきいてしまったようだ。
「おい黎。お嬢さんってお前の彼女じゃないのか?」
「そうだよ! なんで、あんなこと言ってんだ……?」
くわっと牙を剥かれた。黎にはまだ吸血鬼の名残で牙は残っている。
「追いかけないのか?」
「行ってくる」
俺に言われて、今度は黎がうちを飛び出した。
「随分賑やかな家になったなあ」
祖父は感心気だった。