確かに、と俺も思う。
梨実に対して誠実を貫くなら澪は、その関係になる前提の気持ちも伝えるべきだっただろう。
「………」
……だが人のこと、言えない。
俺と真紅の馴れ初めも特殊だから、告白の上に付き合い始めたわけではない。
もっと言うなら、『いつから付き合っている』とはっきりと言えない……。
そんな関係で始まったから、真紅から『好き』の一言をもらえたときは舞い上がるほど嬉しかった。
真紅に対して誠実でいたいから、言葉を欠いてはいけないのだと自分に言い聞かせる。
「……明日、海雨ちゃんに――
「明日から別の病院で実習」
「――――」
ただ事実を告げただけなのに、恨めしい顔で睨まれた。
「……明日は無理かもしれないけど、時間、作る」
「そうだな」
澪が本気なら、そのくらいは出来るはずだ。
俺だって、小埜病院にいられない期間中、ずっと真紅と離れているつもりなんてない。
逢うための時間なんて作らなくちゃ、沸いてくるものでもない。
「ま、がんばれ」
このくらいでいいだろうと、もたれていた背を離した。
「……黎に応援されるなんて気味悪いな」
「その言葉そっくり返す」
澪との関係性の名前は、俺には不明だ。ただの腐れ縁としか言えない。
放っておきたいのに、つい口出し手出ししてしまう、腐れ縁。