一度首を横に振った。
「なんでもない。梨実の話だろう?」
「どうすればいいと思う?」
……澪は本気で相談モードのようだ。
知るかと返してもいいけど、それでは確かに薄情者だ。
何より梨実は、真紅が『理由』になるほど大事にしている友達。勝手にしろなんて言える相手ではない。
「フラれたって、言うようには俺には聞こえないんだが」
「……そうか?」
澪は眉を寄せる。
「からかうな、って怒られたんだろ? 母親の目の前だったからとか、お前が本気で言ってるって取ってもらえなかったんじゃないのか?」
「………」
澪はその場面でも思い出すように、中空を見つめた。
「……俺ってそんな軽薄に見える?」
「今までマジメだと思ってた反動はあるかもな。直接本人にだけ言わなかったとか、言葉足らずだったとか――」
言いかけて、首を傾げた。澪の顔色が変わったからだ。
「思い当るとこでも?」
「……言ってない」
「何を?」
「『付き合いませんか』としか言ってない」
「……言葉足らず」
「うっ……」
俺の一言が突き刺さったように、また机に突っ伏す澪。
「軽薄って言うか……甲斐性なしだよ……」
ダメージ、大きかったようだ。