実際のところ俺も、なんで真紅が自分を好きになってくれたか、なんてわからない。

確かに最初に命を助けはしたけど、あのときの真紅は俺を欲していたと言うよりは、自分の命を肯定してくれる誰かを探していたように感じた。

真紅にも言った通り、真紅の中に送った俺の血の所為で、真紅が自分に対して恋悪感情を錯覚していたのも確かなはず。

でも真紅は、錯覚で終わらせなかった。本当の感情にしてしまった。だから、今がある。

……もし助けたのが俺でなかったら、真紅は誰を望んでいたのだろう。

それこそ結果論だが、真紅を見つけ、助けたのは俺だ。……真紅が好きになってくれた理由は、知らない。

知りたいとは思う。でも、知るのが怖いとも思う。

もし、『助けてくれたから』、と言われたら、それは俺しか駄目だという理由ではないと思えてしまう。俺は真紅しか駄目だというのに。

……女々しいな、今日の自分は。

大学の関係で毎日逢っていたのが逢えなくなると知ったら、梨実の許から真紅のことをさらってしまうし。

無理矢理にでも真紅に逢う時間を作りたかった。

少しの間逢えなくなると告げて真紅がすぐに肯けば、確かに胸を衝く痛みがあって。

誰かを想うということの意味を、真紅の隣で知って行く。

幸せだけではない。でも、真紅でないと無理だ。辛いからと言って、離れるなんて出来ない。辛いことも、真紅とがいい。

……元から、結ばれない運命だったんだ。だから、全ての人ではないけど、認めてくれる人がいる現実が、ただありがたい。

愛してる。

「――黎?」

ふっと物思いに沈んでいたら、澪が呼びかけられた。

今、頭を埋め尽くすほどだった言葉に赤面してしまう。

「……大丈夫か? お前」

落ち込んでいるはずの澪に心配された。