「梨実? なんだ、梨実のこと好きだったのか」

「なんか急に可愛いなって思ったんだよ。お前のお嬢さんバカに当てられたのもある」

「……可愛かったら、イコール好きなのか?」

頭の中ではすぐに繋がらなかったから訊いてみた。

「知らねえよ。なんか気ぃついたら言ってた」

どうやらフラれたところまで本当らしい。

そして澪自身にも突拍子もない告白だったようだ。……それってアリなのか?

俺自身の真紅への気持ちは、もう逢わないと決めて離れたあとに真紅のことを思いだしてばかりで、そうしているうちに積もって行った感覚なので、急に可愛いと思って言ってしまうというのがよくわからなかった。

「フラれたって、嫌いとか言われたのか?」

「お前のそのデリカシーのなさ、本当嫌い」

「ありがとよ」

「……付き合いませんか、って言ったら、顔真赤にして「からかわないでください」って言って布団被った」

「……それだけ?」

それってフラれたのか?

「梨実さんのお母さんもいたんだけど、梨実さ――海雨ちゃんにからかうようなこと言うから、更に頑なに出てこようとしなかった……」

「……母親いる目の前で告(い)えるメンタルしてるお前が落ち込むの、珍しいな」

「わりーがお前の血液提供者だぞ? 生半可なメンタルでてめえにの手ぇ切ってられ――

「まあ、お前の血が嫌いだったおかげで真紅のこと助けられたから、そこのところは結果的には感謝だな。……どうした?」

言いかけて固まった澪。呼びかけると、はっと顔をあげた。

「おい黎、海雨ちゃんに言ったか? 俺がお前に血ぃやってたって」