「今のお前は、幽鬼(ゆうき)という状態だ。幽霊体であり、鬼の俺が無理につなぎとめたから鬼の構成要素もある」

淡々と語る櫻を見て、氷室は表情をなくす。

「……幽霊? ……鬼?」

氷室は呆然とつぶやく。呑み込めない単語ばかりだ。櫻は、はあ、と息をついた。

「お前、事故に遭ったんだよ。憶えてないか?」

事故? そんなことあったっけ――

「…………あ」

そういえば。子供が歩いているところに車が突っ込んできたから、そこに飛び出してしまったことは憶えている。しかし、その後は真っ暗だ。

「……んじゃ、何で俺……」

改めて自分を見てみると、怪我どころか服に汚れひとつついていない。それに何でこんな離れた場所でぼけっと突っ立っていたのだ? ……謎が謎を呼ぶばかりだ。

「えーっと、何て言ったかなあ……李が言ってたんだけど……。あ、そうだ。氷室は今、『植物状態』ってやつなんだと」

「……しょくぶつじょうたい?」

「そう。脳だか心臓だかが止まっているって言ってた。んで、」

「幽体離脱!」

「……うん。まあ、そんな感じだ。で、」

「俺は幽霊であり鬼のあなたが繋ぎ止めたから鬼でもあると……」

「…………うん。で、」

「あなたは岬先生の先祖で鬼……。ってことは岬先生も何らかの異種である可能性が高い……」

「うん、俺の話聞かないでそこまで推察出来るお前すげえけど話聞けよ! 頭いいって聞いてたけど面倒くせえなお前!」

「よく言われます」

「照れ照れ言うんじゃねえよ! 何で俺が突っ込みキャラになってんだガラじゃねえ! いいか、お前は現在死にかけている。魂が完全に離れてしまう前に俺がこの世界に繋ぎとめるためにお前を俺の眷族(けんぞく)にしたんだ。だからお前は今、人間じゃなく幽鬼だ。そして、鬼でもあるからお前の体はまだ死んでいない。―――わかったか?」