「……あれ?」

目覚めた氷室は、ぽけっとした。周りをぐるりと見廻す。……あれ?

「何だ、もう来てしまったのか」

声が耳に入って、そちらを向く――

「……紅い人……」

紅い髪に着流しの男が腕を組んで立っていた。場所は――桜葉と来た、桜の古木のある教会だった。時間は夜。教会のライトアップで、桜吹雪が神秘的に輝いている。……何でこんなところにいるんだ?

「あー、やっぱ俺視えてたんだ」

赤髪の男は、雑に髪を掻き上げる。

「……あの、何で俺ここに? いや、何で俺……」

何で自分がここにいるかなんて、訊いてもわからないだろうに。男性は、ん? と首を廻らした。

「何でっつったら、まあ、李に言われたから呼んだんだけどな?」

「……すもも?」

果物に呼ばれたのか、俺は。

「あー、違う違う。岬李。お前んとこの……『保健室の人』とか言ってたっけか?」

「岬……先生?」

「そう。それだ」

「じゃあ、あなたはやっぱり……」

「李の……なんだ? 保護者っつーか先祖っつーか……李の父でも祖父でもないんだけど、とりあえず李は俺の子孫だ」

「はあ?」

ものすっごい胡乱な目で見られた。男も男で、自己紹介が怪しすぎる自覚はあった。伊達に長年この存在やってない。