『……』

『……』

『……あの子、大丈夫そうね。桃花が出ていくからびっくりしたじゃない』

『だってー』

『だってじゃねえよ。俺一人の責任にしようとしてたのに、お前らまで官吏(かんり)にどやされるぞ?』

『もともとあたしたちは連帯責任じゃない』

『しばらく冥府(めいふ)にいないといけないくなりそうね……』

『だな。……あー、さっそくお呼びがかかってる。お前も同じ手で助けられたろーに』

『わかっているなら寿命には介入しないでもらえますか?』

一瞬で、櫻たちのいた景色が変わった。

山の中の草原。様々な季節の花が咲き、ふりそそぐ太陽と月の光はやわらかい。

『全員正座』

桜たちをこちらへ引き込んだ声の主は、端的に命令した。

桜、桃花、そしてゆきは彼――冥府における官吏である彼に逆らっても意味はないとわかっているので、おとなしく草原に正座した。

目の前に、和服の男性が姿を見せた。

『桜の古木は治外法権ですが、あそこまでやられるとさすがに問題』

『……わかってるよ惣一朗。だから俺ひとりでやろうと――』

『官吏、とお呼びください。あなた一人でやっても結果は同じなんですよ、義父上(ちちうえ)?』

『……名前で呼ばれたくねえんならその呼び方もやめろよ……王たちに目をつけられるの、俺なんだけど』