「えっ? りぃちゃん彼氏いたのっ?」

「違いますよ。桜を見にきただけですよ」

あはは、と笑う李。李はカッコいい系のパンツスーツスタイルが多いけれど、しゃべってみるとほんわりしていて可愛い人だ。

「ええっ、りぃちゃん可愛いのに~。わた」

「お前と付き合うのは俺だけだ」

またもや危険発言をしかけた桜葉を抱き寄せて黙らせる氷室。一応氷室、桜葉に告白はしているのだが……幼馴染というよくある壁にぶつかって、付き合うまでは至っていない。なので押しまくっているところだ。

「氷室くん!」

「岬先生だからいいだろ? でも先生、今何か紅い人いませんでした?」

「あかいひと? 氷室くん何わけわからないこと言ってるの」

「紅い人、ですか……?」

変な氷室の言葉に桜葉は眉根を寄せて、李も何度も瞬く。誰の事を言っているのか、二人にはわからないようだった。

「どこにもいないよ?」

きょろきょろする桜葉。桜の古木が薄紅を降らせる教会の庭には、三人以外の誰もいなかった。

「……あれ?」

今度は氷室が首を傾げる。桜葉は氷室の見間違いだろうと結論付けて、李に向き直った。

「りぃちゃん。ここよく来るの?」

「はい。ここ、あたしのお守りなんですよ」