「……俺の子孫であり俺の娘の転生だから、娘だと思って接している」
「俺とは立場が違うが……岬先生に恋人が出来たらどうする?」
「見守る」
「……そうか」
氷室の肩からふっと力が抜けた。抜けたことを言いながらも、櫻の唐突な会話に緊張していたようだ。
「つまり俺は、死にかけであってまだ《死んだ》わけではないんだな?」
「そうだな。そういうことだ。……聡いヤツって案外面倒だな」
最後、ぽつりと櫻が呟いた。
「とりあえず、桜葉に逢いたい。……いや、もう逢えないのか……。姿を見たい。桜葉が無事かどうかだけでも見てきたいんだが……」
「それもお前が決めろ。幽鬼は地縛霊じゃねえから、どこへいくのも自由だ」
「……そうか」
氷室はさっと踵を返した。
「お前、淡白だなあ」
歩き出した氷室の後ろを、櫻がついてくる。
「………」
「もっとこう、何かねえのか? 死んだって宣告されたようなもんなんだぞ?」
立ち止まって、氷室は拳を握った。櫻は後ろで足を止めてそれを見遣る。
「別に……死んだことはどうでもいいんだ。ただ―――……桜葉に逢えないのは、きつい」
「――仕方ねえ、俺も一緒に行くわ」
櫻は大雑把な動作で氷室の髪をわしゃわしゃと掻いた。