あれから、二年。私は、少し膨らんできたお腹に手を当てながら、病院の定期健診にきていた。

今日は予定日がわかるとのことで、診察前から、少しだけ緊張した。

新田咲香(にったさきか)さん」

名前を呼ばれて、内診をおえると、先生に呼ばれて診察室に入った。

「順調ですよ、女の子で、8月△日が予定日です」 

思わず、言葉が出なかった。

「8月△日なんですね。あ、ありがとうございます」

私は、先生に頭をさげて、診察室を出ると、お会計を済ませた。

外に出れば、日差しが暖かい。まるで空から、ばあちゃんが、あったかい手のひらで、私達を包んでくれてるかのように。


ーーーー8月△日、それは、ばあちゃんの誕生日。

私は、晴れ渡る空を見上げながら、皺皺の笑顔に、絞りの浴衣がよく似合う、『ミシンの魔法使い』を思い出していた。