その日、私達は、二人揃って有給を取ると、浴衣リメイクのパジャマを入れた紙袋を持ち、美雪は、真四角の箱を抱えて、ばあちゃんの病室を訪ねた。
「どないしたん?」
今日は平日の昼間だから、ばあちゃんは驚いていた。
「有給取ってん、だってな……」
美雪と目線を合わせる。
「ばあちゃん、お誕生日おめでとう!」
私と美雪は、大きな声と共に拍手をしながら、ばあちゃんにプレゼントの紙袋を渡した。
「……何や、驚いたやんか……ありがとう」
ばあちゃんは、少しだけ震えていた。
そして、紙袋を開けると、ばあちゃんの瞳から大粒の涙が転がった。
「……どないしたん?これ?」
「二人で浴衣解いてな、美雪が裁断してん」
「でな、咲ちゃんが、ばあちゃんのミシンで縫ってくれてな、二人で作ってみてん。着てみてや」
ばあちゃんの涙は、初めて見たかもしれない。けれど、ばあちゃんに育ててもらった私達からしたら、初めてみる涙が、嬉し涙だったことに、幸せな気持ちになった。
ばあちゃんは、絞りの浴衣パジャマに袖を通して、ズボンを履くと、銀歯を見せて、ニカっと笑った。
「ピッタリや!肌触りもええし、涼しいし、絞りの柄見てると、一人の時も、じいちゃんと喋ってる気分になれるしな。……何より、咲ちゃんとみゆちゃんが、ばあちゃんのために、こんな上等な絞りのパジャマ作ってくれたのが、嬉しくてたまらんねん……」
私達は、ひと回り小さくなった、ばあちゃんと三人で肩を抱き合って、泣いて笑った。
その夏の終わり、ばあちゃんは、私達の花嫁姿を見る夢を叶えられないまま、浴衣パジャマを着て、眠るように、じいちゃんの所へ逝った。
「どないしたん?」
今日は平日の昼間だから、ばあちゃんは驚いていた。
「有給取ってん、だってな……」
美雪と目線を合わせる。
「ばあちゃん、お誕生日おめでとう!」
私と美雪は、大きな声と共に拍手をしながら、ばあちゃんにプレゼントの紙袋を渡した。
「……何や、驚いたやんか……ありがとう」
ばあちゃんは、少しだけ震えていた。
そして、紙袋を開けると、ばあちゃんの瞳から大粒の涙が転がった。
「……どないしたん?これ?」
「二人で浴衣解いてな、美雪が裁断してん」
「でな、咲ちゃんが、ばあちゃんのミシンで縫ってくれてな、二人で作ってみてん。着てみてや」
ばあちゃんの涙は、初めて見たかもしれない。けれど、ばあちゃんに育ててもらった私達からしたら、初めてみる涙が、嬉し涙だったことに、幸せな気持ちになった。
ばあちゃんは、絞りの浴衣パジャマに袖を通して、ズボンを履くと、銀歯を見せて、ニカっと笑った。
「ピッタリや!肌触りもええし、涼しいし、絞りの柄見てると、一人の時も、じいちゃんと喋ってる気分になれるしな。……何より、咲ちゃんとみゆちゃんが、ばあちゃんのために、こんな上等な絞りのパジャマ作ってくれたのが、嬉しくてたまらんねん……」
私達は、ひと回り小さくなった、ばあちゃんと三人で肩を抱き合って、泣いて笑った。
その夏の終わり、ばあちゃんは、私達の花嫁姿を見る夢を叶えられないまま、浴衣パジャマを着て、眠るように、じいちゃんの所へ逝った。