「さ、咲ちゃんも、みゆちゃんもおいで、ばあちゃんから、プレゼントや」

ばあちゃんは、和室に置いてある木製の大きな衣装ケースから、真新しい浴衣を2着取り出した。

それぞれ、ハンガーにかけられていて、長さが違う。

「これ、咲香の?」

期待で、目をキラキラさせて、ばあちゃんを、見つめた私に、ばあちゃんは、紺地に色とりどりの蝶々が、沢山ついた浴衣を、ふわりと羽織らせてくれた。

「わぁ、めっちゃかわいい」

くるりと回ってみせた私に、美雪が、ばあちゃんの腕に飛びついた。

「みゆも!みゆも!」

「はいはい、みゆちゃんのもあるよ」

小さな美雪の身体にも同じ紺地に、向日葵の模様の浴衣が、そっと掛けられる。

「みゆ、ひまわりだいすき」

美雪が、カエルみたいにピョコピョコ飛び跳ねた。

「今度の週末、泊まりやろ?丁度、夏のお祭りあるさかいにな、ばあちゃんが連れてったるからな、それ着て行こ」

「うんっ」
「うんっ」

重なった声に、ばあちゃんは、私と美雪を交互に見ながら、にこりと微笑んだ。


週末が、待ちきれなかった私達は、どうしても、ばあちゃんの浴衣を着て、夏祭りにいきたくて、ばあちゃん家の軒下に、てるてる坊主をぶらさげた。

そのおかげなのか、夏祭り当日の夜は、雲ひとつない夜空に満天の、星が瞬いていた。