インターンとして勤務したのは丸々4年。社長と私が言葉は交わす内容のほとんどは、仕事に関することだけ、
社長からは指示をもらい、私はロボットのように「はい」「かしこまりました」と返事をするだけ。
まるで、工場機械のようなもの。

その間、社長が何に苦しんだのか、普段何を考えているのか……ということは、一切知ることはなかった。
逆に、私が何が普段考えているのかなんて、彼は一切聞かなかった。
インターンが終われば、それで社長との関係が終わると思っていたから。

そうして、気がつけば大学を卒業する時がやってきた。
4年の間にインターンや社員の人数が増えて、 高校のクラス1個分の人数規模になっていた。
社長が目指す方向性に共感をしたというインターンは、皆私と違って夢を追いかけているような、ギラギラした目を持つ人たちばかり。
一方の私はと言えば。
のんびりと暮らしたい、困らない程度のお金があればそれでいいくらいにしか思っていなかった。
そのせいか、他のインターンとは距離ができていた。
でも、社長だけは、そんな私のことを気にしてくれていたと思う。
無理に飲み会に誘うことも、社長はなかった。

ある時、他のメンバーが私に対して

「もっと明るく!ハッピーオーラだしなよ」
「こっちのチームに居るんだから、大きな夢を持たなきゃダメだよね」

という意見を押し付けようとしたときもあった。
その時も社長は

「人はそれぞれなんだから、別にいいじゃない」

一言だけ言ってその場を収めたこともある。
そんな社長が、唯一私を誘ってくれた飲み会と言うのが、社内で簡単に行う卒業飲み会だった。