項垂れて今にも泣き出しそうにしながら、泣くのをこらえている小鳥遊の顔が、いじらしかった。

聞かなかったふりをしたほうがいいのかと、言葉を探していると、彼女はさらに続けた。

「ずっと……10年も薬を飲み続けなきゃいけないんだって。体に消えない傷までできて、いつまた……ごめん。仁科くんに話しても仕方ないね」

彼女は震える弱々しい声で、肩を震わせていた。

俺は彼女の隣の席に座り、彼女の肩をそっと抱きしめていた。

咄嗟のことだった。

カーーッと体が火照って、ハッとして体を離した俺。

「仁科くんは優しいね」

彼女はポツリ、消え入りそうに言ってクスッと笑った。

彼女が会計を済ませ、薬を受け取るのを待ち、俺たちは病院を出た。

寂しそうで、どこか頼りなくて覚束ない彼女の様子が放ってはおけなかった。