「仁科くんには、いっぱい愚痴を聞いてもらって、慰めてもらったね」

「俺はただ、聞いていただけだし」

「うん、それがスゴく嬉しかった。聞いてくれる人がいる、そう思うだけで荒れた気持ちが凪いだの。辛い気持ちを全部、受け止めてもらった」

「小鳥遊……」

「ねぇ、仁科くん。わたし、仁科くんが居なかったら乳房再建手術を受ける勇気もなかったと思うし、抗がん剤の副作用にも耐えられてないなって」

「大げさだな」

小鳥遊は冬休みに乳房再建手術をし、抗がん剤の副作用で抜けてしまった髪の代わりにウィッグを着けていた。

彼女は「髪の毛が生え揃うまでは辛抱かな」と、笑って話せるまでになっている。

翌日、昼休みに図書室で会う約束をした。

「何で図書室?」

俺が訊ねると、小鳥遊は返す本があるからと言った。

昼休み。

「ねぇ、仁科くん。サッカーの試合、観に行っていい?」

俺は昨年5月、1年生でレギュラー入りし、6月の高校総体にも出場した。