エレベーターが停まりドアが開くと、万萬は筆記用具を上着のポケットにサッと仕舞った。

紗世の後ろに付き、編集部に入ると万萬は、丁寧に一礼した。

「お世話になります」口が利けないという万萬の聞こえないはずの声が聞こえてきそうだった。

渡部と紗世が万萬と、向い合わせてソファーにかける。

万萬は鞄から、ファイルに挟んだ原稿を数点取り出し、机に並べる。

「結城から主旨は聞いているようだね」

万萬はコクリ頷きメモを取り出し、ペンを走らせる。

――連載は初めてなので、幾つか作品を持ってきました。どういう傾向が良いのかと

「そうだな …… こてこてした話はいらない。爽やかな印象がいい。カフェで寛ぎながら読めるような」

――了解です。概要を考えて出来上がったら、出てきます