「麻生くん、由樹は真っ直ぐ西村先生の所に行っている。10時に『万萬詩悠』っていう男の子が、来る予定だから、受付から連絡があったら案内して」
「『万萬詩悠』って、『限りなくグレーに近い空』で群青新人賞受賞した人ですよね?」
紗世の声はいつもより2段階もトーンが高い。
「そう、いい小説を書くんだがね。少し変わった子で …… まあ、会えばわかるよ」
沢山江梨子の連載小説終了を機にと、渡部が半年以上も前から温めてきた「万萬詩悠」起用だ。
年齢不詳、経歴不明、素顔をまともに見せない、――などミステリアスという点では、話題になるのは間違いない。
沢山江梨子の機嫌を損ねることなく「万萬詩悠」を売り出す機会、失敗する訳にはいかない。
渡部は慎重に事を運んできた。
受付から連絡が入ると、紗世は1階の受付まで「万萬詩悠」を迎えに降りた。
「『万萬詩悠』って、『限りなくグレーに近い空』で群青新人賞受賞した人ですよね?」
紗世の声はいつもより2段階もトーンが高い。
「そう、いい小説を書くんだがね。少し変わった子で …… まあ、会えばわかるよ」
沢山江梨子の連載小説終了を機にと、渡部が半年以上も前から温めてきた「万萬詩悠」起用だ。
年齢不詳、経歴不明、素顔をまともに見せない、――などミステリアスという点では、話題になるのは間違いない。
沢山江梨子の機嫌を損ねることなく「万萬詩悠」を売り出す機会、失敗する訳にはいかない。
渡部は慎重に事を運んできた。
受付から連絡が入ると、紗世は1階の受付まで「万萬詩悠」を迎えに降りた。