「でも……」

「結城は紗世ちゃんに1度に全部詰め込みたくないんだろう。紗世ちゃん?」

「はい、何ですか」

「結城や黒田さんには聞けないこととか、あるんじゃないかって前から思ってたし」

紗世は、そうそうなのと言いたげに相田を見る。


会社ビルから、そう遠くない落ち着いた路地。

シックな佇まいの喫茶店に案内された紗世。

オフィス街にこんな喫茶店があるなんて、と思う。

マスターおすすめのシフォンケーキと紅茶。

「幸せ」

紗世は顔を綻ばせる。

「結城とは、お茶したりする?」

相田が真顔で訊ねる。

「あいつ、食べ物とか飲み物とかかなり神経質みたいだから」

「美味しい和食のお店には、よく入りますよ。だけど結城さんって少食なのか、あまり食べないんですよね」