「大きなお世話だ……いけ好かない女」

結城がポツリ溢した言葉は、紗世には聞き取れない。

紗世が見上げた結城の横顔は、どこか憂いを帯びている。

紗世は結城が、社長秘書の浅田より、幾つも年下なのに、浅田を見下ろし睨んでいたことが気になって仕方ない。

「結城さん、浅田さんに何か言われたんですか?」

霜田奈利子の家に向かう車中。

紗世は助手席から、結城の横顔に訊ねる。

「別に …… 相変わらず香水がキツイなって言ってやっただけ」

「結城さん!? ケ、ケンカ売ったんです~?」

紗世は顔をひきつらせる。

「何で?」

「えっ 何で …… って!?」

「香水の匂いがキツイって、当たり前に言っただけが何でケンカなんだ?」

「うッ……KY。結城さんッてKYだったんですね」

「はあ?」

「だから、意地悪されるんですよ~」