「言っただろ、自分より体重の重い女と付き合う気はないって」

「そんな女の子いるのかしら? ずいぶん華奢な女の子が好みなのね」

「まあな……それに有らぬ噂を取り巻き使って流すような姑息な女、大嫌いだし」

「何のことかしら!? でも、火の無い所に煙は立たないっていうわよ」

「覚えておくよ」

結城は無表情でフッと息をつく。

「顔色悪いわよ。ヒーローになりたいなら、もっと体を鍛えなさい」

結城は浅田を冷たく見下ろしている。

エレベーターのベルが鳴る。

紗世が「結城さん、すみません」駆け寄り、睨み合う結城と浅田に気付いて、立ち竦む。

「ご忠告、どうも」

結城は微かに口角を上げ、浅田から視線を外し、紗世に向き直る。

「麻生、行くぞ」

結城が紗世の手首を掴み、歩き出す。

紗世は浅田に会釈し、結城の後を追う。