「お姉さん?」

「……ほら、書類持って行ってこいよ」

「結城さん!? 体、大丈夫なんですか? ……熱が」

「微熱だ ……」

――結城さんは優しい。噂 …… なんて信じない

紗世はニコリ微笑む。

「麻生、出かける準備はできてるか? ロビーで待ってるから、早く降りてこいよ」

「はい」

「何かあったら、電話かメールしろ。いいな」

紗世は笑顔で大きく頷いて、広報部へ向かう。

編集長の渡部が、紗世と入れ替わり呑気な顔で戻り、席につく。

「由樹、まだ例のことを引き摺ってるのか」

「……編集長」

「あれは、お前のせいではないんだ。いい加減吹っ切れよ」

「…… そんな簡単にははいきませんよ …… まだ終わってないのに」

「由樹、1人で悩むなよ。いいな」

「はい」