丁寧に優しく。

紗世はじっと見つめられる恥ずかしさで、下を向く。

「ほら、暗いから正面向いて」

淡いピンク系のナチュラルパウダーを使い、大ブラシを肌の上でクルクルと優しく滑らせる。

仕上げに薄くチークを頬にのせる。

結城は満足げに「よし」と言い、紗世に携帯用の手鏡を見せる。

「わぁーーっ、腫れが気にならない」

紗世は鏡に写る自分の顔をしげしげと見つめる。


「それに肌のトーンが明るく見える」

結城は化粧道具を片付けながら「口紅は自分のをな」とポツリ。

「すごーい。何でお化粧の仕方を知ってるんですか?」

結城が袋に入れていく化粧の入れ物、書かれている化粧品の名前を見る。

「レアミラクル?」

「市販では見かけない化粧品だろ」

「はい」

「姉貴が仕事で使ってるんだ」