「熱が?」

「……微熱」

結城は咳で、くぐもった声で言う。

「フラフラじゃないですか」

紗世は結城を椅子に座らせ「大丈夫ですか」と顔を覗きこむ。

ぐったりと椅子に凭れかかった結城。

「…… そんな腫れた瞼で行くな」

「わたしのことより、自分の心配してください」


「…… ッ…… 」

「結城さん!?」

結城は上着のポケットを探り、小さな瓶からカプセルを取り出し口に入れる。

「…… 5分だけ…… 背中を ……」

結城はそう言って、ぐったりと机に突っ伏す。

「…… 嫌な噂 …… 聞いたんだろ ……」

「喋っちゃダメです」

「自慢じゃ …… ないけど …… 陰湿な噂 …… 日常茶飯事だから」

「喋らないで」

「…… 秘書課の女が…… ふったの逆恨みして ……」

「えっ!?」

「不定期に …… 嫌がらせしてくる …… 取り巻きを使って ……」