結城の目が紗世から外される。

離れていく結城の顔が凍てつく。

――結城さん

紗世は顔を上げ、寂しそうな結城の横顔を見て、顔色が冴えないのに気づく。

「…… ゴホッゴホッ…… !!ツッ」

「結城さん!!」

何かが喉に、つかえたように辛そうな湿って重い咳。

紗世は結城が昨日も時々、咳をしていたのを思い出す。

結城がふらり机に凭れかかる。

「!! …… ゴホッ…… ンッ痛っ」

結城の体が沈みこみ、胸を押さえ踞る。

「結城さん!!」

「……な、何でも……ない」

結城の息遣いが荒い。
視線が虚をさ迷い定まらない。

紗世が駆け寄り、そっと触れた手を結城が払う。

――あっ

一瞬、触れた結城の手がひどく熱く感じる。