「放してください」

「そんな顔で行かせられるわけないだろう」

「結城さんに関係ないでしょう!?」

結城は視線を避ける紗世に、鋭い視線を向ける。


「何か言われただろ!? 何を聞いた?」

「何も……」

「だったら、何で避ける?」

紗世は結城の顔を見ない。
見ようとしない。

「ちゃんとこっち向け。何か言いたいこと、聞きたいことがあるならハッキリ言え」

紗世は黙って俯く。

「あのな~、部下にそっぽ向かれてたら仕事できないだろ」

紗世は押し黙ったまま震えている。

「……俺はそんなに信用できないか? 目を真っ赤にして……瞼を腫らすほど辛い思いをさせてるのか?」

紗世は何も言わない。

「……わかった」

結城の手が紗世の肩から、力なく離れる。