――頭おかしい人だ。満員のエレベーターに乗れない体質って何!? 涼しい顔で何言ってるの?

紗世が戸惑っていると、エレベーターのベルが軽快に鳴って、扉が開く。

イケメンは素早くエレベーターに乗り込む。

紗世はエレベーターに乗り込み、玄関ロビーを走ってくる数名を待つ。

「早く扉閉めて番号ボタン押せよ、集団が雪崩込んでくるだろ」

スッと、細く長い腕が紗世の目の前に伸びる。

紗世が「あっ」と思った刹那、細くて長い形の良い指が「閉」ボタンと番号ボタンを押した。

走ってくる人たちを置き去りにして、エレベーターの扉は無情に閉まり、上り始める。

「うわあーーっ、信じられない」

「うるさい」

「超冷血人間」

「だ·か·ら――満員エレベーターには乗れない体質なんだ俺は」

「わたし、あなたのこと絶対、忘れない」