「結城くんって、色んな噂あるでしょ!?」


「そうなの?」

紗世は社内の噂にはあまり興味がないし、かなり疎い。

社内の有名人だという結城のことも、つい半月前まで実際「名前」しか知らなかったくらいだ。

「紗世、結城くんって社内の女子が毎日キャーキャー騒ぎながら噂したり、行動チェックしたり、写メ交換してるような有名人で人気者なのよ」

紗世は「知らないの!?」という言葉が、聞こえてきそうだと思う。

「紗世が結城くんと、ここ半月ずっと一緒に行動してるのを快く思ってない人が、すごく多いんだよ。意地悪とかされてない?」

愛里は紗世が相当心配なのか、懸命に話す。

「ん……とくに何もないよ。編集部の黒田さんも恐いけど色々、教えてくれてるし」

「結城くんはちゃんと仕事、教えてくれてる?」