紗世が情けない声を出し、辺りを見回す。

壁にもたれかかっていたイケメンが紗世を一瞥し、何食わぬ顔でエレベーターの前に立っている。

「あなた、エレベーターに乗らなかったの?」

「何か文句ある?」

「別にないけど、このエレベーターって30人くらいは大丈夫でしょ?」

「だから何?」

「えっ!?……」

「満員のエレベーターって嫌いなんだ」

「はあ?」

――何言ってんの? この人、ワケわかんない

「あんたは平気、満員のエレベーター?」

「好きではないけど……」

「乗れるんだ……俺は無理、あんな状態で絶対無理」

「閉所恐怖症なの?」

「違うけど……俺、満員のエレベーターとか電車とか乗れない体質なんだ」

紗世は怪訝そうな顔で、イケメンを見上げる。