結城の悲痛な顔が未だにちらつき、結城には確認できていないが……。

解き終えた校正マニュアルの問題は、結城の添削によりみるみる真っ赤に染まっていく。

「ヒャーーッ」

「全く理解してないな。ヒャーって、こっちが叫びたい」

「だって……」

「あのな~『句読点』は、大抵『てにをは』に付くんだよ。長い文は声に出して読んで、区切ってみて『ね』を付けておかしくないかどうか」

「てにをは……」

「小学校、中学校で原稿用紙の書き方を習ってるはずだが」

「そうですか~?」

紗世はぷくり頬を膨らませる。

「で……この文は倒置法なのに、なんか意味不明だろう? 漢詩みたいになってるだろ」

結城は1つ1つ、丁寧に指摘しながら色分けして書き込み説明する。

時々、喉をつまらせ痰を切るような、辛そうに喘ぐような咳をする。