「すごいですね、資格。他にも?」

紗世は努めて明るく言ってみる。

「将棋7段、書道5段、秘書検定1級、華道茶道は免状持ちだ……他にも多数」

「由樹はギフテッドなのよ」

「ギフテッド?」

聞き慣れない単語に首を傾げる紗世。

「生まれつき潜在能力が平均よりも高い天才って意味」

「黒田さん、違いますよ」

「IQ170越えなのに何、否定してるのよ」

「だから、人を超人みたいに言わないでくださいよ。尾ひれがついて、仕事が増えて大変なんですから」

結城は情けない声を出し、紗世の開いたマニュアルのページを見る。

「そのページ終えたら添削してやる」

黒田に対する言葉と紗世に対する言葉は、まるで違う。

紗世は、結城の上司は先日のエロおやじ「ミステリー作家の『西村嘉行』」との会話から、黒田に違いないと踏んでいる。